<黄ビビオ君 大往生>

 

(2011年7月23日 K4-GP直前のオーバーヒート)

2011年8月12日、待ちに待ったK4GPの本番だ。

去年はアクセルペダルが外れるというアクシデントにより、表彰台に上がれなかった。

アメリカ出張中に1週間だけ帰国して出場したのに、非常に悔しい思いをした。

 

今年はぜひ雪辱を晴らして、入賞したい。

もう19年前の車なので、アクセルペダル以外にも消耗部品があるかもしれない。

念入りにメンテナンスしよう。特にブレーキ周りは念入りにやる。

 

メンバーみんなでビビオのメンテナンスをした。

ブレーキホースを交換し、ブレーキマスターシリンダーもオーバーホールした。

軽量化も力を入れた。去年より30kg軽量化して、

ガソリン満タンで620kgだ。

 


しかし毎年、本番直前に必ずと言って良いほどトラブルがある。

いつもは排気バルブが欠ける事が多い。

こうなると圧縮が無くなり、酷く遅くなる。

そして、今年の事前トラブルは、

 

オーバーヒートだった。

7月23日、富士スピードウェイの走行会に参加した。

K4GPのエントリーチームだけが出走できる。

 

いつもと趣向を変えて、12周のスプリントだ。

そこで黄ビビオのセッティングを見る。


K4-GPに向けてバルタイを純正に戻した。これで少し燃費が良くなる。

その分馬力は低い。90馬力程度だろう。

 

スプリントのドライバーはツネ氏。30分程度なのでドラチェンは無しだ。


ツネ氏への指示はただ一つ、「何があっても全開で踏むよーに」

 


〜そして、運命のスプリント開始〜

何となく遅いなあ。

 

ラップタイムは2分21秒。

ツネ氏なら2分16秒くらい出るはずなのだが。

バルタイのセッティングが悪かったかな?


周りの車がスプリント仕様になっているためか、更に遅く感じる。

 


とか考えながらピットから見ていて、5周目に突入。

黄ビビオがホームストレートに戻ってきた。 

だが、、、、やけに遅いそ?

むしろ徐々に減速している感じ。

だんだんゆっくりになってきて、

左側の芝生へ入って、

ホームストレートの真ん中あたりで停止。

うーん、いったいどうした?

ツネ氏はすぐに車から降りて安全な場所に移動する。

ピットからは遠くて様子が分からない。

携帯で連絡をとると、「エンジンが自然停止した」とのこと。

何だろう?ECUかな?

 


レースが終わって戻ってくるまで分からない。

待とう。

12周のスプリントが終わり、黄ビビオがレッカーに引かれて戻って・・・こない。

あら〜?自走で戻ってきたぞ。

 


状況を聞くと、だんだんパワーが無くなって、最後は全く吹けなくなり、エンジンが止まったらしい。

走行中は水温は異常無し。

しかし停止したとたん急に水温計が上昇したとのこと。

 

 

オーバーヒートだろうが。冷却液は減っていない。

水温ではなくて油温上昇が原因ぽい。

原因はオイルの入れ過ぎだと予想。

だんだん吹けなくなる現象は、ピストンの熱膨張により、シリンダーブロックとの隙間が狭くなり、摩擦が大きくなることによる。

 

 

アルミと鉄の膨張率の差だ。

冷えれば隙間が元に戻って動く。

一般的にピストンとシリンダーのクリアランスは0.04mmだ。

 

試しに高回転まで回すと軽く打音が聞こえる。メタルが逝ったなあ。

クランクメタルかコンロッドメタルを交換すれば直るだろう。

カムのタペット打音が大きくなった気がする。少しヘッドが歪んだか?

だが、仕事が超多忙につき8月11日までに休みが3日間しかない。

最小限のオーバーホールにしよう。

懸念がもう一つ。

ピストンが磨り減って、小さくなってるかもしれない。

 

エンジンオイルは真っ黒。

交換してから200kmなのに。

たぶんピストンが削れたアルミ粉だろう。

 

でも、ピストン入れ替えは無理だ〜。

ピストンの量産バラつきに合わせてシリンダーボーリングをするのが普通。

今からでは間に合わない。

 

ということでメタル交換だけやることにした。

(下抜きメタル交換の詳細はコンロッドメタルOHを参照


(そして2011年8月12日 K4-GP本番)

 

オーバーホール後の調子は良い。

なんとなく吹けあがりが悪い気がしなくもないが、できることはやった。

 

今年は勝ちを狙って4人体制だ。

ドライバー順番は前日に決めた。

 

@番手 イケイケ氏

A番手 よっしー氏

B番手 トミー

C番手 ツネ氏

この4人で10時間走りきる。

1番手は最も長く3時間ぶっ通しの運転になる。

 

今年は燃料が90L

コースはシケイン有りの4563m。

いつも以上に厳しいレースになるだろう。

そしてレーススタート

 

がんばれー


が、3周目でピットイン。

急にすごく遅くなったとのこと

 

エンジン音がおかしい。ばらついている。

この音は、排気バルブの破損だ。

巷では“ビビオ病”と言われるほど広く認知されているEN07のエンジンブローだ。

黄ビビオは10回近く発症しているが、なんと本番レース中は初めて。

 

故障の原因を考えてみる。

そういえばバルブの打音が大きかったな。

7月23日のオーバーヒート時にアルミヘッドが歪んでバルブクリアランスが広がったのだろうか?

 

どうにもならない。

このままレース続行だ。

イケイケ氏でさえラップタイムが3分超と、ありえない遅さ。

 

1時間半が経過したところで、イケイケ氏から「辛いのでドラチェンしたい」

との連絡が入り、2ndドライバーのよっしー氏に交代。

しかし、よっしー氏も1時間ちょっとでガソリンが尽きて交代。

なんかブローの症状が悪化して、アイドリングすらしなくなってるんだけど・・・

ついに2気筒逝ったみたい。

 

よっしー氏の次は俺だ。

残り7時間で自分の番が回ってきた。

さて、どれほど遅いのか?

 

車に乗り込み、スタート。

もうね、ピットロードを走っただけでメチャクチャ遅い。

例えるなら、ビビオでアルシオーネSVXを牽引してる感じ。

それくらい遅い。

 

FSWのシケイン後の上り坂は1速じゃないと失速して登れないし・・・

ホームストレートの最高速は頑張って110km/h。

車重620kgでこの加速は40馬力ってところかな。

それなのにバックファイヤーが酷くて、折角のアルミマフラーが溶けて抜けて音だけは迫力ある。

 

乗っていて苦痛。

 

さらにずっとアクセルべた踏みのため、ガソリンが見る見る減っていく。

 

そんな走行1時間でガソリンタンクが空になりつつあった。

運転しながら作戦を考える。

レースは残り6時間もある。どうするか?

給油して最後のドラチェンをするか・・・。

いや、チェッカーフラッグだけ受けさせるために、車をピットに入れて待機させよう。

 


を?そうか!

ピットで修理ができるな!

そういえば排気バルブの予備品と専用工具を持ってきてたじゃん!

直そう!

それしかない!

ということでレース中にエンジンをオーバーホールすることにした。

 


1年半ぶりのエンジン作業だ。

頭の中で手順をシミュレーションする。

本来の外す順番は、バンパー → ラジエター → スパチャ → エキマニ → インマニ → カム → ヘッド なのだが、

走行から帰ってきたばかりで冷却水が熱い。ラジエターを後に回そう。

すると、バンパー → スパチャ → エキマニ → インマニ → カム → ラジエター → ヘッド だな。

軽作業はメンバに指示を出しつつ、エンジン本体は俺メインでひたすらに作業を進める。

締め付けトルクは、俺のHPに書いてあるのをスマホを持っているメンバーにで調べてもらった。

 

〜ひたすら作業〜

 

1時間程でバルブまで到達。

 

見ると、2番と3番の排気バルブが欠けてた。

ヴィヴィオのいつもの定位置だ。

換えの排気バルブは丁度2本持ってきている。あと1本欠けてたら危なかった。

 


バルブを入れ替えて、外したのと逆の順番で組みつけていき、

4時間後に組み付け完了!!

 

間髪入れずにエンジンをかける。

一発始動!綺麗に回っている。完璧!

修理は凄く短い時間に感じたけど、意外にかかった。

 

レースの残りは2時間だ。

すぐにコースインせねば。

液体ガスケットは生だが問題ないだろう。

 

順位はほぼビリ。

もう挽回は絶対出来ないな。今回は仕方ない。

 

この後のドライバーは仕切り直して、

Cツネ氏(60分)

Dよっしー氏(20分)

Eトミー(20分)

Fイケイケ氏(20分)

でいく。

よっしー氏、トミー、イケイケ氏はブローした遅い状態で耐えて運転していてストレスが溜まってる。

スッキリしたい。

修理後の1番手ドライバーは、ツネ氏だ。

 

おー。

タイムは2分25秒あたり。

これが本来の黄ビビオだ。

 

1時間ほど走ってよっしー氏に交代。

 

 

そして自分の番が来た。

速い!!

小雨が降っていたが、これ以上無いくらい全開で走る。

きっちり9000rpmのレッドゾーンまで回して、それはもうコーナーで膨らみすぎるくらいに突っ込んで全開で踏んだ。

 

気持ちよく走っていたら、そのうちフロントガラスがやけに曇ってきた。

雨だからな。ヒーター無いし。

まあいい、ドラチェンのときに吹いてもらおう。

 

30分ほど走行してピットイン。

そして、ドラチェンの為にピットロードで車を止めると、ボンネットから煙が・・・

 

慌ててボンネットを開けると、エンジンルームがオイルまみれだ。

オイルがどこからか漏れて飛び散ってる。オイルの残量は殆ど空。

フロントガラスが曇ってきたのはオイルだったのか!

 

オイルが無いのはヤバイ。が、アイドリングは安定してるし、パワーの落ちてる感じは無かった。

オイルを継ぎ足せば大丈夫だろう。

最後のイケイケ氏に託す。

 

ペースを落とすことなくは2分25秒あたりで順調に走り、完走。

結果はクラス52台中50位。

こういうこともあるさ〜。


レース後にオイル漏れについて原因を調べた。

ブローバイから大量にオイルが噴出している。

恐らくピストン棚落ちだろう。

 

もうこのエンジンは修理不可能で使えない。

来年に向けて新しく次期エンジンを組み上げよう。

 

 

 

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